おいずる)” の例文
土間に、置きすててあるおいずるを、老人はひっくり返して、あわただしくあらためた。赤いよだかけをした地蔵如来、幾つもの巾着、守札まもりふだ、椿の花——
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おいずる一つをにのうて行かれたあとに、瘠せ犬が二疋、つれ立って行きましたが、それも国境で戻って来たと見え、夕方には村に着いておりました。
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
軟派は例の可笑おかしな画をる連中である。その頃の貸本屋は本をたてに高く積み上げて、おいずるのようにして背負って歩いた。その荷の土台になっている処が箱であって抽斗ひきだしが附いている。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と、道ばたの寒椿の、白いのや、紅いのを、むしり取っては、前へ鉦を叩いてゆく、男のおいずるへ投げつけていた。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
養家ようかひんしたため十五歳で京都の妙心寺みょうしんじに小僧にやられ、名を十竹じっちくともらい、おいずるを負うて、若いあいだ、南都なんと高野こうや、諸山を遍参へんさんして、すこしばかり仏法をかじったり、一切経いっさいきょうを読んでみたり
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)