端然きちん)” の例文
「……止そう、そんな事を云うんなら。」と葛木は苦笑して、棒縞お召の寝々衣ねんねこを羽織った、胡坐あぐらながら、両手を両方へ端然きちんと置く。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
端然きちんと坐ってると、お組が、精々気を利かしたつもりか何かで、お茶台に載っかって、ちゃんとお茶がその前へ二つ並んでいます……
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黒縮緬の雪女は、さすが一座に立女形たておやまの見識を取ったか、島田の一さえ、端然きちんと済まして口を利こうとしないので、美しいひとはまた青月代に、そういた。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寝床の上に端然きちんと坐って、膝へ掻巻かいまきの襟をかけて、その日の新聞を読む——半面が柔かに蒲団ふとんに敷いている。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
端然きちん居坐いずまいを直して、そのふっくりした乳房へ響くまで、身に染みて、鳩尾みずおちへはっと呼吸いきを引いて
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょうどこの時代じぶん——この篇、連載の新聞の挿絵さしえ受持で一座の清方きよかたさんは、下町育ちの意気なお母さんの袖のうちに、博多の帯の端然きちんとした、襟の綺麗な、眉の明るい
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
縁側を背後うしろに、端然きちんと坐った、お君のふっくりした衣紋えもんつきの帯の処へ、中腰になって舁据かきすえて置直すと、正面をけて、お君と互違たがいちがいに肩を並べたように、どっかと坐って
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さすがにまだ端然きちんと坐って、例の(菅女部屋。)で、主税は独酌にして、ビイル。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とおとなしく云って、端然きちんと会釈して
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)