端無はしな)” の例文
貫一は帽を打着て行過ぎんとするきはに、ふと目鞘めざやの走りて、館のまらうどなる貴婦人を一べつせり。端無はしなくも相互たがひおもては合へり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
端無はしなくも銀座あたりの女給と窓の女とを比較して、わたくしは後者のなお愛すべく、そして猶共に人情を語る事ができるもののように感じたが、街路の光景についても
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
端無はしなくも幹の中央に貼附はりつけたる一片の紙に注げり。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼はに夢ならでは有得べからざるあやしき夢にもてあそばれて、みづからも夢と知り、夢と覚さんとしつつ、なほねむりの中にとらはれしを、端無はしなく人の呼ぶにおどろかされて、やうやものうき枕をそばだてつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
端無はしなく彼は憶起おもひおこして、さばかりはありのすさびに徳とも為ざりけるが、世間に量り知られぬ人の数の中に、誰か故無くして一紙いつしを与ふる者ぞ、我は今へいせられし測量地より帰来かへりきたれるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)