立佇たちどま)” の例文
家の中を一と廻りした後、平次は廊下に立佇たちどまつて伊三郎の氣を引いて見ました。
ああ、揃って大時計の前へ立佇たちどまった……いや三階でちょっとお辞儀をするわ。薄暗い処へ朦朧もうろうと胸高な扱帯しごきか何かで、さみしそうにあらわれたのが、しょんぼりと空から瞰下みおろしているらしい。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と声を掛けられてもわたくしは、制服を着ていることではあるし、学園のお嬢さんに違いないと思うだけで、恐らく老人は日和の挨拶でもしようとするのだろうと思って立佇たちどまっただけでした。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
私は立佇たちどまって遠慮もなく美しい花嫁子はなよめごの顔を視入みいった。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
可懐なつかしい姿、ちっ立佇たちどまってという気もしたけれども、小児こどもでもいればだに、どのうちみんな野面のらへ出たか、人気ひとけはこのほかになかったから、人馴ひとなれぬ女だち物恥ものはじをしよう、いや、この男のおもかげでは、物怖ものおじ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
法眼は暫らく立佇たちどまって考えていましたが、手を振って言いました。
茶屋知らず物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)