穢苦むさくる)” の例文
月代さかやきの伸びた荒くれ男どもは本職の渡世人らしく、頬冠りや向う鉢巻で群がっている穢苦むさくるしい老若は、近郷近在の百姓や地主らしい。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
楽声を聴いて心を悦ばせるには、上品でなくてはならないというのではないが、いかにも穢苦むさくるしい感じを与えられた。下卑げびていたこともいなまれなかった。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
穢苦むさくるしい六疊室の、西向の障子がパッと明るく日を受けて、室一杯に莨の煙が蒸した。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そこの主人はしよつちゆう塩原多助の講談を愛読してゐて、自分も多助のやうに道に落ちた草履でも拾つてみたく思つたが、草履には土がへばり着いてゐるので、少し穢苦むさくるしかつた。
改め斯樣に穢苦むさくるしき住居すまひなれども此方こちらへ御通り下されと最丁寧なる挨拶あいさつに瀬戸物屋の忠兵衞は莞爾にこ/\として立入けり此瀬戸物屋忠兵衞と云ふは至つて女ずきにて殊にお光は後家なりと思ふ者から見れば貧苦ひんく容子ようす故一はだぬいで世話を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「イヤ。まずまずお話はあとから……こちらへ上り下されい。手前一人で御座る。遠慮は御無用。コレコレ金作金作。お洗足すすぎを上げぬか……サアサア穢苦むさくるしい処では御座るが……」
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
穢苦むさくるしい六畳間の、西向の障子がパツと明るく日をけて、室一杯にたばこの煙が蒸した。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)