祖父様じいさま)” の例文
太郎さんは紙に包んだ三粒の赤い丸薬をお祖父様じいさまの前へ置いて、最前からの話をして、ふるえながら泣いてあやまりました。
若返り薬 (新字新仮名) / 夢野久作海若藍平(著)
私は泣いてばかりいたので、目を悪くしてしまったの。どうしてあんなに苦しんだかと思うとおかしいほどよ。お祖父様じいさまは御親切そうな方ね。
『大野九郎兵衛の孫ですよ。ひどい祖父様じいさまや親父があったものです。立退く時、あわてて、乳母と一緒に忘れて行ったという不愍ふびんな子なので』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祖父様じいさまは江戸からお国へお帰りの途中、近江おうみ土山つちやまの宿でお亡くなりになって、その地へお埋めしたのですから、お国のはもっと古い仏様ばかりです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
お前は、唐沢の家の歴史を忘れたのか、お前にいつも話している、お祖父様じいさまの御無念を忘れたのか。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「お祖父様じいさま、昔を今になすよしもがな、引揚者の合宿所にならなかっただけでも倖せです」
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
「お祖父様じいさま!」とその時女の声、霧の中から響き渡った。走り出たのはイスラエルのお町!
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私にも国もとにこの御隠居様と同じ年恰好のお祖父様じいさまがあります。小さい時から大層私を可愛がってくれましたので、江戸へ奉公に出て来ても、一日だって忘れたことはありません。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
彼の後ろのふすまが、けたたましく開け放されなかったら、そうして「お祖父様じいさまただいま。」という声とともに、柔らかい小さな手が、彼の頸へ抱きつかなかったら、彼はおそらくこの憂欝ゆううつな気分の中に
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
祖父様じいさまは元信州の者で、ゆえ有って越後高田に近き山家やまがへ奉公住みを致してると、或日あるひ榊原公が山猟やまがりにおいで遊ばして、鳥を追って段々山の奥にり、道に迷って御難儀の処へお祖父様が通り掛って
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お前は立たない、あの時の女親は怖かったのであろう、で、病人は三度目に、お祖父様じいさま、どうぞ、孫兵衛をこれへ、と側にいる老人へ眼で哀願した。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祖父様じいさまに言いつけてあげます。私がまたじきに戻ってきてつまらないことをするとお思いなすっては、まちがいですよ。私だってほこりは持っています。
あなたはお祖父様じいさまのお命を取ったも同然ではありませんか。そんな大切なお薬を雀の生命を取るために使うなぞと、まあ何という乱暴な坊ちゃんでしょう。
若返り薬 (新字新仮名) / 夢野久作海若藍平(著)
「やっぱりお祖父様じいさまはご最後になって、神様を信じたのでございますわねえ」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「これは古い机の引出しにあったので、お祖父様じいさまのものらしいよ。」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
どうかして返してもらおうと思いましたが、しかたがありませんから、お祖父様じいさまの丸薬を盗んだ事を話しますと、乞食はさもさも驚いたという顔をしました。
若返り薬 (新字新仮名) / 夢野久作海若藍平(著)
それで私は、お祖父様じいさまに会って話してみようと考えました。別れるようなことがあれば、私はきっと気が変になります。死にます、病気になります、水に身を投げます。
「私は元からこの通りすこやかなのに、お祖父様じいさま、どうして、そんな事をおたずねなさいますの」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これはお祖父様じいさまの御本だったのだよ。」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
うそですわ。私ジルノルマン様にあなたをしかっていただきますよ。お祖父様じいさまならお父様を少したしなめることができます。さあ、私といっしょに客間にいらっしゃいよ、すぐに。」
「お祖父様じいさま、ただ今帰りました」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)