硝子盃コップ)” の例文
その蔵屋という方の床几しょうぎに、腰を懸けたのは島野紳士、ここに名物の吹上の水に対し、上衣コオトを取って涼をれながら、硝子盃コップを手にして
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ご病気だった。それだもの、湯ざめをなさると不可いけない。猪口ちょこでなんぞ、硝子盃コップだ、硝子盃。しかし、一口いかがです。」
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
肩細く市場へ入ったのが、やがて、片手にビイルのびん、と見ると片手に持った硝子盃コップが、光りを分けて、二つになって並んだのは、お町さんも、一口つき合ってくれる気か。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
硝子盃コップで、かわりをして、三杯ぐっと飲んだが、しばらく差俯向さしうつむいて、ニコリとなって、胡坐あぐらを直して、トンと袴をたたくと、思出したように、住居すまいから楽屋へ帰った。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょいとたしなめるような目をした。二人で仲よく争いながら、硝子盃コップを取って指しました。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巻莨まきたばこ硝子盃コップを両手に、二口、三口重ねると、おさえた芝居茶屋の酔を、ぱっと誘った。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
事実、空間に大きく燃えたが、雨落に近づいたのは、巻莨まきたばこで、半被股引はっぴももひき真黒まっくろ車夫わかいしゅが、鼻息を荒く、おでんの盛込もりこみを一皿、銚子ちょうしを二本に硝子盃コップを添えた、赤塗の兀盆はげぼんを突上げ加減に欄干ごし
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに台のスッと細い、浅くてぱッと口の開いた、ひどくハイカラな硝子盃コップを伏せて、真緑まみどりで透通る、美しい液体の入った、共口のびんが添って、——三分ぐらい上が透いていたのでしたっけ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
深山越みやまごしの峠の茶屋で、すさまじき迅雷じんらい猛雨に逢って、げも、引きも、ほとんど詮術せんすべのなさに、飲みかけていた硝子盃コップを電力遮断の悲哀なる焦慮で、天窓あたまかぶったというのを、改めて思出すともなく
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たばこを捨てて硝子盃コップを取って
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)