石女うまずめ)” の例文
「そりゃ勇しいことですな。ですが、私の許しを得ないで無暗に動き廻ると、X線を浴びて石女うまずめになるかも知れませんよ。はっはっ」
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、急に眞面目な顏をしてぢつと男の顏を見ながら、『眞箇よ。私石女うまずめなんですもの。子供を生まない女は女ぢやないんでせう?』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
明日は海を渡って見知らぬ遠方に行くという念慮も、すっかり忘れてしまって、石女うまずめも舞い、木人も歌い、水入らずの極楽天地であります。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「尤も、内儀の里江さんは石女うまずめで、三十年連れ添つても子が無いからと、夫が若い妾を置いても、不足らしい顏もしない」
血の近い山城の賀茂の一族の中からここ一番という石女うまずめを探しだし、叶わぬまでも運命に抵抗してみることにした。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
跨つたものは、すでに一個の、無心の物体である。もし、さうでないとするなら、あれは、冬の石女うまずめにちがひない。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
「へえエ、勝則が出来るまでは、お前は石女うまずめかと思うちょったが、出口がついたと見えるのう」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
石女うまずめのお艶の、可愛がるやうにて、怖らしきよりは、万事物和らかに、情け深き本妻お秋の何となく慕はしく、多くはそが傍らに在りしに、お秋もまた遣る方もなき心の憂さを
野路の菊 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
前の句は石女うまずめの淋しさを、後の句は亡き子の一周忌をいたむ母の涙の句である。
大正女流俳句の近代的特色 (新字新仮名) / 杉田久女(著)
その幅広な視線で、元気な石女うまずめの丸まっちい女房を見下しながら
牡丹 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
石女うまずめの雛かしづくぞあはれなる 嵐雪
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
石女うまずめらしいあなたのまなじり
癲狂院外景 (新字旧仮名) / 富永太郎(著)
そして、急に真面目な顔をしてじつと男の顔を見ながら、『真箇ほんたうよ、私石女うまずめなんですもの。子供を生まない女は女ぢやないでせう?』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そういう男には石女うまずめ——すなわち子を生まない女とか、或いは現に妊娠している女を授けるという例外になっている」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その石女うまずめの内儀が、妾を殺す氣になるといふことも、當時の物の考へ方には、無いことです。
「勝則が出来るまでは、お前は石女うまずめかと思うちょったが、出口がついたと見えるのう」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
典型的てんけいてきな古風な女房でしたが、石女うまずめ特有の神經質な冷たいところがあり、放縱はうじゆうで作法も禮儀もわきまへないお照に取つては何が何でも煙たい存在であり、それに、天文の研究と稱して