石塊いしくれ)” の例文
河近くは「南瓜」や「唐黍」の畑になっていたが、畑のウネとウネの間に、大きな石塊いしくれが赤土や砂と一緒にムキ出しに転がっていた。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
溝にわたした花崗岩みかげいしの橋の上に、髮ふり亂して垢光りする襤褸を著た女乞食が、二歳許りの石塊いしくれの樣な兒に乳房をふくませて坐つて居た。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
石塊いしくれの多い山合ひの畑での労苦や、長いあぜの列や、それらのいつしよくたになつた重々しい雰囲気を再現してゐるやうに思はれた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
偽だ偽だとあざ笑っていた掌中の石塊いしくれが、あに図らんや小粒ながらもほんとの黄金きんだと分ったような大いなる驚異を感じないわけにはゆかなかった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「重ねてそのようなことを言うたら、すぐわしに知らしてくれ、あのばばめが店さきへ石塊いしくれなと打ち込んで、新しい壺の三つ四つも微塵みじんに打ち砕いてくるるわ」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
切符売場の、テント張りの屋根は石塊いしくれで留めてある。あちこちにボロボロの服装をした男女がうずくまっていたが、どの人間のまわりにもはえがうるさく附纏つきまとっていた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
ネルロの詫言わびごとに耳をも貸さず、家賃や地代が払えないなら、その代り小屋にあるものは、鍋から釜から、木片きぎれ一つ、石塊いしくれ一つに至るまで、すっかりおいて明日限り立ち退けと
人々はみなその宝物の期待で緊張していた。特に監督の役をひきうけていた人は、人夫が不正なことをしはしまいかという心配で、熱し切っていた。一日目は石塊いしくればかり出た。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
今の彼はどこから見ても、石塊いしくれの下にもがいているかにとさらに変りはなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
……お前のやり方が憎らしいから、これだけは言わぬつもりでいたが、そもそも隕石というものは、一種独特の丸い結晶粒があって、地上の石塊いしくれ鉄塊てつくれと直ちに見分けることが出来るものだ。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
玉名郡たまなごほり関の山家は築畦つきあぜ石塊いしくれ黒く夏まけにけり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
石塊いしくれと 語る
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
溝にわたした花崗石みかげいしの橋の上に、髪ふり乱して垢光りする襤褸ぼろを着た女乞食をなごこじきが、二歳許りの石塊いしくれの様な児に乳房をふくませて坐つて居た。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)