真鯉まごい)” の例文
肝魂きもだま泥亀すっぽんが、真鯉まごい緋鯉ひごいと雑魚寝とを知って、京女の肌をて帰って、ぼんやりとして、まだその夢の覚めない折から。……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真鯉まごい緋鯉ひごいとがありまして、あるいは布であるいは紙で作り、大きいのになりますと長さが五、六間にも及びます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
無数の真鯉まごい緋鯉ひごいが、ひたひた水の浸して来る手摺てすりの下を苦もなげに游泳ゆうえいしていた。桜豆腐、鳥山葵とりわさ、それに茶碗ちゃわんのようなものが、食卓のうえに並べられた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
まるで一つのを目懸けて、沢山の緋鯉ひごい真鯉まごいがお互に押しのけながら飛びついてくるかのように。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
早出のを食はうとぬるい水にもんどり打つ池の真鯉まごい——なやましくろうたけき六月の夕だ。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
彼は泉石の間から端正な真鯉まごいおどり上るのを眼にしながら何をするでもなかった。
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「そうしているうちに、そのお池ではいちばん大きな真鯉まごい、二尺もあろうというのが、眼の前で、ピンと水を切って飛び上りましたから、女中たちもみんな驚きました、わたしも驚きました」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)