真髄しんずい)” の例文
旧字:眞髓
剣と人倫、剣と仏道、剣と芸術——あらゆるものを、一道と観じ来れば——剣の真髄しんずいは、政治まつりごと精神こころにも合致する。……それを信じた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
事実の真髄しんずいに余程近づいたことは確かだった。併し、真髄そのものは、矢張やっぱり今にも分り相でいて、少しも分らなかった。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
したがってこの四句の呪文は、単に『心経』一部の骨目こつもく真髄しんずいであるのみならず、実に、八万四千の法門、五千七百余巻の、一切の経典の真髄であり、本質であるわけです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「短い一日では、到底、小止観の真髄しんずいまで、お話はできかねる。きょうは、法筵ほうえんを閉じて、また明日あす、究めたいと思います」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若人わこうどならばすべてが新時代を理解する若人であろうとはいえない。若い生命をもちながら、時の真髄しんずいをつかめない若者もある。長政などは、それだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、当代の碩学せきがくのうちで、華厳けごん真髄しんずいを体得している人といえば、この人の右に出ずるものはないということは、世の定評であり、慈円僧正も常にいわれているところである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将来は、鬼一法眼きいちほうげんの伝を汲み、京八流の真髄しんずいを参酌して、吉岡流の一派をなされた拳法先生のごとく、自分も至らぬ身ながら一心に励んで、宮本流をてたいのが望みでございます。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
善信は、彼の稚気ちきを、おかしく思いながら、彼のあやまった信念を、事ごとに説いて聞かせ、凡夫直入じきにゅう真髄しんずいを噛んでふくめるようにさとしてやると、和尚は、善信の輿こしの前にひざまずいて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この御曹子は、いったい、いつのまに、こう兵学の真髄しんずいを究めていたのだろう。いや兵学を読み習うということは誰もするが、書物や口授から得たことを機に応じて用いることはむずかしい。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)