真丸まんまる)” の例文
旧字:眞丸
主人が偕老同穴かいろうどうけつちぎった夫人の脳天の真中には真丸まんまるな大きな禿はげがある。しかもその禿が暖かい日光を反射して、今や時を得顔に輝いている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見ると、成程、泡も立てずに、夕焼が残ったような尾をいて、その常夏を束にした、真丸まんまるいのが浮いて来るだ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ふうん、大変むずかしいんだな。俺にはそんなようには思われないよ。色が蒼くて真丸まんまるで、その端が地の上へ垂れ下っている。こんなようにしか思われないがな」
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると、夜店の金物屋さんは、眼を真丸まんまるくして
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
真丸まんまるに出づれど永き春日かな 同
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
もっとも河豚のふくれるのは万遍なく真丸まんまるにふくれるのだが、お三とくると、元来の骨格が多角性であって、その骨格通りにふくれ上がるのだから
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて貴僧あなた風車かざぐるまのように舞う、その癖、場所は変らないので、あれあれと云う内に火が真丸まんまるになる、と見ている内、白くなって、それに蒼味あおみがさして、ぼうとして、じっすわる、そのいやな光ったら。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大王はかっとその真丸まんまるの眼を開いた。今でも記憶している。その眼は人間の珍重する琥珀こはくというものよりもはるかに美しく輝いていた。彼は身動きもしない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
立籠って見て始めてわが計画の非なる事を悟った。夏は暑くておりにくく、冬は寒くておりにくい。案内者は朗読的にここまで述べて余をかえりみた。真丸まんまるな顔の底に笑の影が見える。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)