相抱あいいだ)” の例文
二人は互いに駈寄かけよると、野原の真中まんなか相抱あいいだいて、しばし美しい師弟愛のなみだにかきくれた。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
仔細しさいは語らずただ思い入ってそう言うたが、実は以前から様子でも知れる、金釵玉簪きんさぎょくさんをかざし、蝶衣ちょういまとうて、珠履しゅり穿うがたば、まさ驪山りさんに入って、相抱あいいだくべき豊肥妖艶ほうひようえんの人が
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
青空の風船の吊籠つりかごの別世界に、詩人と妖女と相抱あいいだきながら、下界を嘲笑ちょうしょうしてもよろしい。しかし、二人のうしろには、たえまなく、老魔術師の黒い影と、狡猾な悪念がつきまとっている。
「悪霊物語」自作解説 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くきは直立し少数の茎葉けいよう互生ごせいし、初夏しょかこういただき派手はでやかな大花たいかが咲く。葉は直立せる剣状けんじょう白緑色はくりょくしょくていし、基部きぶ葉鞘ようしょうをもって左右に相抱あいいだき、葉面ようめんの中央には隆起りゅうきせる葉脈ようみゃくあらわれている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
相抱あいいだきて煙たどりて音もなく庭にくだりぬ。
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
さぐり寄りつつ、やがて手を触れ、はっと泣き、相抱あいいだく。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)