相愛あいあい)” の例文
春水の人情本には、デウス・エクス・マキナアとして、所々しょしょに津藤さんと云う人物が出る。情知なさけしりで金持で、相愛あいあいする二人を困厄の中から救い出す。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
およ相愛あいあいする二ツの心は、一体分身で孤立する者でもなく、又仕ようとて出来るものでもない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
相愛あいあいして夫婦になったり、恋の病にかかったり——もっとも近頃の小説にはそんな古風なのは滅多めったにないようですが、それからもっと皮肉なのになると、嫁に行きながら他の男を慕って見たり
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
相愛あいあいしていなければ、文三に親しんでから、お勢が言葉遣いを改め起居動作たちいふるまいを変え、蓮葉はすはめて優にやさしく女性にょしょうらしく成るはずもなし、又今年の夏一夕いっせきの情話に、我からへだての関を取除とりの
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
若し相愛あいあいしていなければ、婚姻こんいんの相談が有った時、お勢が戯談じょうだん托辞かこつけてそれとなく文三のはらを探る筈もなし、また叔母と悶着もんちゃくをした時、他人同前どうぜんの文三を庇護かばって真実の母親と抗論する理由いわれもない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)