とどめ)” の例文
あわれ乞食僧はとどめを刺されて、「痛し。」と身体からだ反返そりかえり、よだれをなすりて逸物いちもつ撫廻なでまわし撫廻し、ほうほうのていにて遁出にげいだしつ。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
半可通の通がるは近頃の芸人の頻に素人めかしく肩をいからすと同じく倶に鼻持ちのならぬものなり。文章は絢爛を経て平淡に入り始めて誦すべく芸者は薄化粧の年増にとどめを刺すは申すまでもなし。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
別にその事について文句は申さぬ。芸事で宗山のとどめを刺したほどのえらい方々、是非に一日、山田でうたいが聞かして欲しい、と羽織袴はおりはかま、フロックで押寄せたろう。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)