獅噛しがみ)” の例文
獅噛しがみの火鉢に火はカンカンとおこっているが、人のいないことは出て行った時と同じで、行燈あんどんはあるが、明りのないことも前と同じ。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さればコン吉は、手鍋キャスロオルの中でられる腸詰のごとく、座席の上で転げ廻りながら、ここを先途せんどと蝙蝠傘に獅噛しがみついている様子。
獅噛しがみとかいうものの由であるが、敦煌千仏洞から発見された毘沙門天図では、天王が眷属を率いて、紫雲に乗じて天降り、大海を渡らんとしている。
八戒に遭った話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
と古畳八畳敷、狸を想う真中まんなかへ、しょうの抜けた、べろべろの赤毛氈あかもうせん。四角でもなし、まるでもなし、真鍮しんちゅう獅噛しがみ火鉢は、古寺の書院めいて、何と、灰に刺したは杉の割箸わりばし
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
無家賃でも、すこし油断をすれば生活費が一パイ一パイになる事請合うけあいで、軽蔑されても罵られてもバラックに獅噛しがみ付いていたいという心理状態は、可愛相と云えば可愛相である。
そして、心配気に附添って来た由子の姿を門の外に発見すると、ばったのようにはしって行きまるで赤ン坊のように、獅噛しがみついて泣き出した……よくもこう泪が続くものか、と思われるほど……。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
おれたち二人が中へ這入はひると、帳場の前の獅噛しがみ火鉢へ噛りついてゐた番頭が、まだ「御濯おすすぎを」とも云は無え内に、意地のきたねえやうだけれど、飯の匂と汁の匂とが、湯気や火つ気と一つになつて
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
主人であろう、皮肉そうな爺が、獅噛しがみ火鉢にしがみついている。
染吉の朱盆 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
身を起して見ると——見るというのは勿論、その特有の超感覚で見るのです、以前も以下もそれに準じていただきたい——例の唐銅からかね獅噛しがみの大火鉢には相当火が盛られていた。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)