犬蓼いぬたで)” の例文
たでに似て非なるものを犬蓼いぬたでというように、神人に似て非なる故に犬神人と云ったとの古い説があるが、これは妥当であるとは思われない。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
その砂利の間の薄暗がりから、頭だけ出している小さな犬蓼いぬたでの、血よりもあかい茎の折れ曲りを一心に見下していた。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「油地獄」は「小説評註」と、「犬蓼いぬたで」とを合はせ綴ぢて附録の如くす。「小説評註」は純然たる諷刺サタイアにして、当時の文豪を罵殺せんとする毒舌紙上に躍如たり。
犬蓼いぬたでの赤い花の上に座ってお萩をたべる子供たちの、にこやかな頭の上には高い空があった。文化の昔の女団長の頭の、やっと結わえた蝶々髷ちょうちょうまげには、赤トンボがとまっている。
こゝにこの水流るゝがために、水を好む野茨のばら心地ここちよく其のほとりに茂って、麦がれる頃は枝もたわかんばしい白い花をかぶる。薄紫の嫁菜よめなの花や、薄紅の犬蓼いぬたでや、いろ/\の秋の草花も美しい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
夕光はあはれなれども犬蓼いぬたでの花穂はうれし揺れの重くて
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひとむらの犬蓼いぬたでの花。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
その泥だらけの颯爽さっそうたる姿を、そこいら一面に生えていた、犬蓼いぬたでの花と一所いっしょに思い出す。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)