牡丹花ぼたんか)” の例文
むッくり下から掻い上げ、押出すようにするりと半身、夜具の紅裏もみうら牡丹花ぼたんかの、咲乱れたる花片はなびらに、すそを包んだ美女たおやめあり。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして何よりも——眠れる獅子王ししおうの傍に咲く牡丹花ぼたんかのような容顔、春風になぶられてうごく雄獅子のひげに戯むれ遊ぶ、翩翻へんぽんたる胡蝶こちょうのような風姿すがた、彼女たちの世界の、最大な誇りをもって
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
赤々として暮れかゝる入日の影は牡丹花ぼたんか
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
牡丹花ぼたんかの雨なやましく晴れんとす
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
と、韓湘かんしょうが道術をもって牡丹花ぼたんかの中に金字であらわしたという、一れんの句を口吟くちずさむ若山の声が聞えてんだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
牡丹花ぼたんかの面影のこしくずれけり
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
その美しき花の衣は、彼が威霊をたたえたる牡丹花ぼたんかかざりに似て、根に寄る潮の玉を砕くは、日に黄金こがね、月に白銀、あるいは怒り、あるいは殺す、き大自在の爪かと見ゆる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御堂そのまま、私は碧瑠璃へきるり牡丹花ぼたんかうちに入って、また牡丹花の裡から出たようであった。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きざはしの下に立って、仰ぐと、典雅温優てんがおんゆうなる弁財天べんざいてん金字きんじふちして、牡丹花ぼたんかがくがかかる。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)