煉獄れんごく)” の例文
カトリックに於ては、善人は天国へ、悪人は地獄へ、生れたばかりの赤ん坊は煉獄れんごく(ピュルガトワル)へ行きます。
余はベンメイす (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
彼女は壁掛けに聖徒たちの一代記を刺繍したことがあるが、その顔の表情があまり力づよかったので、まるで煉獄れんごくで苦しんでいる人間さながらに見えた。
彼等の側から言ってみれば、この「あるがままの現実世界」は、邪悪と欠陥とに充ちた煉獄れんごくであり、存在としての誤謬ごびゅうであって、認識上に肯定されない虚妄きょもうである。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
しかも、ひとたび、地上を煉獄れんごくとした堂上人は、りずに、またも、政権欲と女院の内争などにからみ、まもなく再び平治の合戦を起し、ここに源平の対立を発端する。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ロミオ ヹローナのまちはなれては世界せかいい、るものはたゞ煉獄れんごくぢゃ、苛責かしゃくぢゃ、地獄ぢごくぢゃ。
煉獄れんごくの境いから来た霊魂たちです。しかしそのために、神様から追放されているのではありません。あの人たちの罪は私たちと同じように、無分別がさせた罪であるからです。
そしておのれの生活を早くもこの世からの煉獄れんごくとなしてるところのもの、すなわち強力な伝統、真正な主義、無味乾燥な義務、面白みのない労働、燥急、喧騒けんそう、口論、悲嘆、健全な悲観主義
汽車の進むがままに、私たちは窓からた。人数に抱上げらるるようになって、やや乱れた黒髪に、雪なす小手をかざして此方こなたを見送った半身のくれないは、美しき血をもって描いたる煉獄れんごくの女精であった。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なにびとも楽土や煉獄れんごくを見ていない
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
まさに煉獄れんごくの城である。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)