無辺むへん)” の例文
旧字:無邊
ぼくはこんなことを考えながら望遠鏡をとって東のほうを熱心にながめた、双眸そうぼうのふるかぎりはただ茫々寂々ぼうぼうじゃくじゃくたる無辺むへんの大洋である。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しかし……しかし伊那丸いなまるさまは大せつな甲斐源氏かいげんじ一粒種ひとつぶだね、あわれ八まん、あわれいくさの神々、力わかき民部の采配さいはいに、無辺むへんのお力をかしたまえ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
犇々ひしひしと身に迫って来るのを感じる、声を限りに叫んだが、反響エコーは岩の空洞よりオーイと返すのみ、自分は友を呼ぶ、反響は自分を冷嘲する、寥廓りょうかく無辺むへんの天の一角を彷徨さまようて
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
自然界の平衡状態イクイリプリアム試験管内しけんかんない科学的かがくてき平衡へいこうのような簡単かんたんなものではない。ただ一種の小動物だけでも、その影響えいきょうおよぶところははかり知られぬ無辺むへん幅員ふくいんをもっているであろう。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
教をきかで、無辺むへんなる神にあこがるゝ事なくば
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
無辺むへんなる闇を見るごと。
寂寞 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
広量かうりやう無辺むへんたゞまろ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
だが、ただ一ようにほうはいたる巨浪きょろうが、無辺むへんに起伏するのを見るばかりで、何者の影も見あたらなかった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
宏大の無辺むへん都城とじようを営むに
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
東方の地平線上を展望てんぼうするに、そこはいぜん無辺むへんの海波びょうびょうとして天をひたしている、一ぼう目をさえぎるなにものもない、ぼくは胸底深くひめていた計画をはじめて発表した。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)