ほう)” の例文
気が置けなくて、僕などには行きやすい。僕は行くといつも芋を百匁がとこ食べて、ほうちゃの熱いやつを大きな湯呑にお代りをする。
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
番茶のほうじた香ばしいのをすすりながら、新吉は満腹して重たい体をもてあつかうように、食卓にもたせかけ、おときの顔を見て笑った。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
番茶をほうじるらしい、いゝ香気においが、真夜中とも思ふ頃ぷんとしたので、うと/\としたやうだつたさわは、はつきりと目が覚めた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あな疎忽そこつ吐息といきいでたり。気にかけそ、何といふ事もあらぬを。また妻よ、ほうじてむ玄米の茶を。来む春の話、水仙の話、やがて生れむ子のことなども話してむ。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
縫子は、自分の思いつきとして、麦をほうじ、もち米を加え、みんなで挽いたのであった。丸罐には、白砂糖が入っていた。直次の友達が、重吉の帰りをきいて、祝いにくれた。
播州平野 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ほうじこまれて、パイの中。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
あな踈忽そこつ吐息といきいでたり。気にかけそ、何といふ事もあらぬを。また妻よ、ほうじてむ玄米の茶を。来む春の話、水仙の話、やがて生れむ子のことなども話してむ。元旦のこの夜の深さ。
其処そこへ、茶をほうじる、が明けたやうなかおりで、沢は蘇生よみがえつた気がしたのである。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お蔦もいきおいに連れて蹌踉よろよろ起きて出て、自慢の番茶のほうじ加減で、三人睦くお取膳。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
茶をほうじる手つきはなよやかだったが、鉄瓶のはまだたぎらぬ、と銅壺から湯を柄杓ひしゃくの柄が、へし折れて、短くなっていたのみか、二度ばかり土瓶にうつして、もう一杯、どぶりと突込む。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)