烏金からすがね)” の例文
「よく思ふ者はありません。烏金からすがねを貸してひどい取立てをした上、口やかましくて、けちで、大變な人でしたよ」
「そんなに東京に居たいか。あんな土地ところにね。」今ひとりの重役は東京ツ子全体に烏金からすがねでも貸してゐるやうにさげすみきつて言つた。そして次ぎに立つた五分刈頭の方へ眼を向けた。
時代後れの頑物がんぶつ——まあわからずやの張本ちょうほん烏金からすがね長範先生ちょうはんせんせいくらいのものだから、黙って御手際おてぎわを拝見していればいいが——僕の未来記はそんな当座間に合せの小問題じゃない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雨桐はじめ烏金からすがねの絶倍で、しばしばかいがんに及んだのみか、卒業も二年ばかり後れたけれども、首尾よく学位を得たと聞いて、親たちは先ず占めた、びきで、あおたんのつかみだと思うと
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかるにお房は、彼の財布さいふにはそこが無いものと思ツて、追續おツつぎ/\/\預算以外の支出を要求して、米屋八百屋の借をはらはせたり、家賃やちんの滯をめさせたり、まとまツて幾らといふ烏金からすがねくちまで拂はせた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さて小石川服部坂の旗本深見新左衛門、盲人宗悦に借りた烏金からすがねが返金できずつい斬り棄ててしまう。この宗悦の娘で富本の師匠たる豊志賀とよしがが、新左衛門の遺子で十八も年下の新吉と同棲する。
「よく思う者はありません。烏金からすがねを貸してひどい取立てをした上、口やかましくて、けちで、大変な人でしたよ」
一つと見えたる長範が二つになってぞせにけりと云うが、あんな烏金からすがね身代しんだいをつくった向横丁むこうよこちょうの長範なんかはごうつく張りの、慾張り屋だから、いくつになっても失せる気遣きづかいはないぜ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
馬鹿にしている、……此奴こいつは高利貸か、烏金からすがねを貸す爺婆じじばばだろうと思ったよ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平次のような、宵越しの銭さえ持たない者には、烏金からすがねまで貸して溜める人間の心理が解りません。
平次のやうな、宵越の錢さへ持たない者には、烏金からすがねまで貸して溜める人間の心理が解りません。
角兵衛獅子かくべえじしの親方を振り出しに、女衒ぜげん真似まねをやったり、遊び人の仲間へ入ったり、今では今戸に一戸を構えて、諸方へ烏金からすがねを廻し、至って裕福に暮している佐吉の女房です。
稲荷のやしろまで探して行きましたが、その辺には、佐吉の烏金からすがねを借りて、ひどい目に逢わされている家は、門並かどなみの有様ですから、どこの娘をしょっ引いていいのか、縛ることを好きな万七も
視力はひどくうといのですが、實は盲目めくらでもなんでもない癖に、高足駄をはいて杖を突いて、盲目と同じやうな恰好をして、烏金からすがねを貸したり集めたりするといふ、江戸中に響いたそれは因業屋です。