烏丸からすま)” の例文
閑枝は、藤畳の黒く光る烏丸からすまの家から、この東山の洋館に身の置所を換えてからも、その居室には「仙人掌の花」の画をかけていた。
仙人掌の花 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
そこで「……いッそのこと」という処置が、みかどを前に、烏丸からすま成輔なりすけ、千種忠顕、坊門ノ清忠、三名の胸で黙契もっけいされたものだった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
車は三条通りを東に、烏丸からすま通りを真っ直ぐ南へ下ったが、その間御牧はひどく上機嫌で、車の中に葉巻のにおいを籠らせながらしゃべりつづけた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すると、女がある日、一つのかぎをくれて、烏丸からすまより東、六角より北のこういう所に行くと、蔵が五つある。その蔵の南から二番目のを、このかぎで開けなさい。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
けれど尊氏は、しごく大ざッぱに、これらの家族を見、ひとまず烏丸からすまのさる女院のお住居のあとへ入れて、時折には通っていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美術工芸の名工を京都烏丸からすまに集めたので、京都は美術工芸の中心地となり、本阿弥ほんあみ光悦とか野村宗達などの優れた工芸家があらはれ、桃山風の華美な工芸品を作つた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
………妻ハ烏丸からすま通ヲ越エテナオマッスグニ歩イテ行ク。左ノ手ニハンドバッグト一緒ニ、今ノ商店ノ包ミ紙ラシイモノニ包ンダ、細長イ平ベッタイ包ミヲ持ッテイルガ、中身ハ何デアルカ分ラナイ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
千種忠顕は参内の帰途、新田義貞の烏丸からすま屋敷をたずねていた。そして云々しかじかと、わけを語り、弾劾文の写しを彼にみせたのだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
烏丸からすまの某家から譲り受ける約束をした元贇焼げんぴんやき花瓶はないけ安南絵あんなんえの壺を受け取って来てもらいたいとの事で、ついでに、頼まれて出立いたしました
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宿所の指定地は、二条烏丸からすまの一館と、附近の寺院長屋などである。狭いとは見られたが、空地はひろく、いくらでも兵舎やうまやの建て増しはきく。
公卿では花山院師賢もろかた、あぜちの大納言公敏きんとし、北畠具行ともゆき、侍従の公明、別当実世さねよ烏丸からすま成輔なりすけ、さえもんのかみ為明ためあき、左中将行房、ちぐさ忠顕ただあき、少将能定よしさだ
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——烏丸からすまどのが御自慢の家臣元成と、西華門院の雑仕ぞうし卯木うつぎは、火もおろかな仲とみゆるが、さて、千種殿ちぐさどのの弟君が、だまって指をくわえていようか」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かねて天皇帷幄いあくの秘臣とにらまれていた大納言宣房、洞院とういん実世さねよ、侍従の中納言公明、烏丸からすま成輔なりすけなど、みなその自邸で寝込みをおそわれ、一網打尽に、捕縛された。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たいら成輔なりすけ、単に「烏丸からすまどの」ともよばれる中宮亮ちゅうぐうのすけ成輔も、平家系の縁すじだった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さすがにその規模きぼは義貞が私邸にもらった二条烏丸からすま古館ふるやかたの比ではない。
と、着京後すぐ、二条烏丸からすまの改築を考えていた。