為来しきた)” の例文
旧字:爲來
ただ母は昔からの為来しきたりを非常に尊び、年中行事にくわしく、それをきちんきちんとやった。未だにその習慣が思い出されると悪くない。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「否、そんなものじゃございません。矢っ張り女郎の参拝です。生き残った平家の女子達が今の稲荷町の基を開いたというので昔からの為来しきたりです」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
現にこの風習と、一緒にしてしまって居る地方の多い「山ごもり」「野遊び」の為来しきたりは、大抵娘盛り・女盛りの人々が、中心になっているのである。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
朝飯のぜんが並んだ。これまでは御隠居と若い主人とがかみに据わる。自分は末座につらなって食べることになっていた。これは先代の主人が亡くなった年からの為来しきたりである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
うわべはどうでも、理窟は知ってても、小児こどもの内からの為来しきたりで、本当ほんとに友達のようにも思い、世話になったとも思う上に、可愛い、不便ふびんだと思うから、前後あとさきも考えなかった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ為来しきたりに外れるようなことがあると怒られた。例えば仕事をしておいて、そのままにして出かけたりすると猛烈に怒られた。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
をとめの閨戸ねやどをおとなふ風は、何も珍しげのない国中の為来しきたりであつた。だが其にも、曾てはさうした風の一切行はれて居なかつたことを主張する村々があつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
十二の年から十何年か勤め、その後で御礼奉公を二三年やって廿幾つかで年が明け、それから独立したわけだ。それは当時の為来しきたりとして決っていたことだ。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
おとめの閨戸ねやどをおとなうふうは、何も、珍しげのない国中の為来しきたりであった。だが其にも、かつてはそうした風の、一切行われて居なかったことを、主張する村々があった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
此よりも古い民間の為来しきたりでは、万葉の東歌アヅマウタと、常陸風土記から察せられる東国風である。
古代生活の研究:常世の国 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
こう言う風に、物を知らせるのが、あて人に仕える人たちの、為来しきたりになって居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そうして、夜に入ってくたくたになって、家路を戻る。此為来しきたりを何時となく、女たちのはなすのを聞いて、姫が、女の行として、この野遊びをする気になられたのだ、と思ったのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)