あく)” の例文
あくけた恋慕流しの咽喉のどから察するに、相当その道に苦労して、女という女を見事征服してきたに相違ない——。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
腹だけが大きくふくれて、眼のギョロッとした子供が、炉の中のあくを手づかみにして、口へ持って行っていた。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
赤羽橋のたもとから引立てゝ來た女乞食は、奉行所の端女はしための手で、見事にあく洗ひにされました。
まだ生きていられますか、というのがハッキリ聞えて来たから、冗談じょうだんにしてはあくが強すぎる。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
洗ひましたよ、一人々々あく洗ひにして、蔭干かげぼしにしてゐると、いつもの三輪の萬七親分が飛んで來て、手一杯に掻き廻した上、五丁目の尺八の師匠、竹童とかいふ鼻の下の長げえのを
お美代は、出入りのとびかしらの口ききで、草加そうかのほうから来ている女であったが、すっかり江戸の水に洗われて、あくぬけしてきていた。膚の白い、ぽっちゃりした、眼の涼しい娘だった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「爺つぁん、あんまりあくの強い悪戯わるさはしないがいいぜ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)