灝気こうき)” の例文
旧字:灝氣
その純白なサナトリウムは灝気こうきに満ちた山の中腹に建っていて、空気は肺にみ入るように冷たいが、陽の光は柔かな愛撫あいぶを投げかけてくれる。
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
青空の灝気こうきしたたり落ちて露となり露色に出てこゝに青空を地によみがえらせるつゆ草よ、地に咲く天の花よとたたえずには居られぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その蒼い灝気こうきの中に、点々としてかすかにきらめくものは、大方おおかた昼見える星であろう。もう今はあの影のようなものも、二度と眸底ぼうていは横ぎらない。
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
又川海の灝気こうきや体育の保健とか、或は環境がしかあらしめたものでもなく、求め努めて迎へ逢着するところの、性癖性感へまでに基因するものではなからうかと思ふ。
魚美人 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
そこで山水清閑の地に活気の充ちた天地の灝気こうきを吸うべく東京の塵埃じんあい背後うしろにした。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さてさらに貴嬢きみの解し難きものの一を言わんか、この灝気こうきを呼吸するかの二郎なり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
美のように増して来て、解けずに、灝気こうきの中に升って、10065
天の灝気こうき薄明うすあかりやさしく会釈えしゃくをしようとして
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そのベランダへ出ると、明るい灝気こうきがじかに押しよせて来るようだった。すぐ近くに見おろせる精神科のむねや、石炭貯蔵所から、裏門のかきをへだてて、その向うは広漠こうばくとした田野であった。
秋日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
女の解し難きものの一をわが青年倶楽部の壁内ならではかもさざる一種の灝気こうきなりといわまほし。今の時代の年若き男子一度このうちに入りて胸を開かばかれはその時よりして自由と人情との友なるべし。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
所有あらゆる卑しい境を脱して、灝気こうきの中をおのぼりなさい。
灝気こうき穿うがって出て来ます。これも同じわけです。