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瀬川菊之丞
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せがわきくのじょう
源内が先に立って、楽屋口から頭取座の方へ行くと、
瀬川菊之丞が、
傾城揚巻の
扮装で、頭取の横に腰を掛けて出を待っている。
江戸一
番の
女形、
瀬川菊之丞の
生人形を、
舞台のままに
彫ろうッてんだ。なまやさしい
業じゃァねえなァ
知れている。
文調は
重に
瀬川菊之丞(王子路考)
中村松江(里公)岩井半四郎(杜若)の如き
女形若しくは
市川春蔵佐野川市松の如き
若衆形を描けるを見るべし。
当代一の
若女形、
瀬川菊之丞なら、
江戸一
番のお
前の
相手にゃ、
少しの
不足もあるまいからの。——
判った。
相手がやっぱり
役者とあれば、
堺屋に
会うのは
気が
差そう。
二
代目瀬川菊之丞が
全盛を
極めていることとて、その
影は
決して
濃いものではなかった。