かっ)” の例文
胸を見ると、背中まで抜けそうなまなこかっと、鬼の面が馬場をにらんで、ここにも一人神がたたずむ、三造は身自から魔界を辿たどおもいがある。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
谷へ出た松の枝に、まるで、一軒家の背戸のその二人をにらむよう、かっまなこみひらいて、紫の緒で、真面まむき引掛ひっかかっていたのです。……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
灰色の網の中空から斜めにさっと張ったよう、中だるみに四方かっと、峰のけた処がある。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かっと瞳を張って見据えていたまなこを、次第にふさいだ弥次郎兵衛は、ものも言わず、火鉢のふちに、ぶるぶると震う指を、と支えたなりの、巻莨まきたばこから、音もしないで、ほろほろと灰がこぼれる。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)