そそ)” の例文
そして木履ぼくり穿いて降り立つと、まがきの菊の根を縫って来る小流ささながれに身をかがめて、口をそそぎ手をきよめなどしていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、その時さえこの川は、常夏とこなつの花にべにの口をそそがせ、柳の影は黒髪を解かしたのであったに——
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「夜ははやあけたよ。忍藻はとくに起きつろうに、まだ声をもださぬは」いぶかりながら床をはなれて忍藻の母は身繕いし、手早く口をそそいて顔をあらい、黄楊つげ小櫛おぐしでしばらく髪をくしけずり
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
彦右衛門正勝は、すぐ奥へは通らず、風呂所のわきの流しで、口をそそぎ、びんの毛など、でていた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何ともたとえようがありません。ただ一分間、一口含みまして、二三度、口中をそそぎますと、歯磨楊枝ようじを持ちまして、ものの三十分使いまするより、はるかに快くなるのであります。口中には限りません。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手を浄め、口をそそ烏帽子えぼしや衣服も新しくえて来てから、やがて戻ってそこに坐り直した。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、それにならって、若い郎党の侍従介じじゅうのすけも、顔をあらい、口をそそぐと、太陽を礼拝して
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)