淫逸いんいつ)” の例文
馬鹿ばかげた笑い方をし、うれしそうに眼を輝かしながら、淫逸いんいつな話をつづけるので、そういう会話の中に出ると彼は面食めんくらってしまった。
貞節の士の夢のごとき淫逸いんいつ美妙なエジプトの舞踏を東方の蓮葉女はすっぱおんならがやるのを、終日ながめて暮らすトルコ人のように僕は作られてるのだ。
徳川様ご入府時代の世の中、寛永尚武しょうぶの世の中、元禄の淫逸いんいつ、田沼の作った悪政と賄賂わいろの世の中、また、文化文政の全盛も世の中なら、天保てんぽう飢饉ききんも、ある間の世の中じゃった
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僧二 世間ではそれを真宗の教えは淫逸いんいつをもきらわぬからだなどと申しています。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それがため、かれは例の忌わしい広告画を押入れにしまって、宿を出ると、いつも騒騒しい楽隊や喧擾けんじょうや食物や淫逸いんいつちまたの裏から裏を這いありく犬のように身すぼらしくぶらつくのであった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
僧侶の驕奢きょうしゃ淫逸いんいつ乱行懶惰らんだなること、罪人の多く出ること、田地境界訴訟の多きこと等は、第三者の声を待つまでもなく、仏徒自身ですら心あるものはそれを認めるほどの過去の世相であったのだ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼らは彼を塗りたて、彼にリボンを結びつけ、彼の律動リズムに真綿を着せ、印象派的色彩で、淫逸いんいつ頽廃たいはいの色でその音楽を飾りたてていた……。
涅槃ねはん主義者となり、福音ふくいん信者となり、仏教信者となり——その他自分でもよくはわからなかったが——喜んであらゆる罪悪を許し、とくに淫逸いんいつな罪悪を許し
激怒、淫逸いんいつ、殺害の渇望、肉の抱擁のみ合い、最後にも一度かきたてられた池の泥土でいどだった……。
淫逸いんいつは彼にとって、別に罪悪ではなかった。生命の泉を汚すものこそ大なる罪悪であった。
全社会の親睦しんぼく、科学の奇跡、夢幻的な空中飛行、幼稚な野蛮な詩など——勲功と愚直と淫逸いんいつと犠牲とにみちた勇ましい世界であって、そこで彼の酩酊めいていした意志は彷徨ほうこうや熱のうちに揺らめいていた。