浮子うき)” の例文
すると水面の浮子うきが動いて、強く水の中へ引きこまれ、私はタバコの煙にむせながら竿さおをあげた。釣れたのは大きなはぜであった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
川の水は濁りよごれてい、藻草や水錆が水面に浮かび、夕日がそれへ色彩をつけ、その中で浮子うきが動揺してい、それを武士は眺めていた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
母親はそれを笑顔で眺めながら、やはり釣竿を手にしていましたが、自分の浮子うきの方には殆んど眼をやりませんでした。
今度も刑期中に彼は三種の考案をしてきた、一つは『自動食器洗ひ』で他は『地引網の浮子うきの改良』と『魔法の折紙』と彼が名づけたものであつた。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
急におびえた表情になって、視線をらして、すこし身体を兄の方にずらすようにした。兄の方は、黙って釣糸を垂れたまま、じっと浮子うきを眺めている。
魚の餌 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
少年はと見ると、干極そこりと異なって来た水の調子の変化に、些細の板沈子いたおもり折箸おればし浮子うきとでは、うまく安定が取れないので、時〻竿を挙げては鉤を打返うちかえしている。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
宮川は水が深く流れがゆるやかなので、じつと堤に腰を落着けて、ゆつくり浮子うきのチヨン、チヨン、スウと沈むのを楽しむ事が出来て、春風駘蕩の季節に溶け込める。
釣十二ヶ月 (新字旧仮名) / 正木不如丘(著)
その下流しもの方で、急にぐいぐい私の釣糸を引張るやつがあり、二色に塗った浮子うきが水を切って走る。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
夕方、岸に坐りこんで、じっと浮子うきを見てるほど楽しいことは、ほかにありませんね。
その首輪の結び目へこれも釣のとき浮子うきの代わりに使う小さな鈴玉をつけて
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
浮子うきよりももつと軽々かろがろ私は浪間に躍つてゐた
浮子うきはないんですか?」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
すると水面の浮子うきが動いて、強く水の中へ引きこまれ、私はタバコの煙にむせながら竿さおをあげた。釣れたのは大きなはぜであった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はや釣りの寄せ餌を投げ込んで、先づ一服する。心の眼に今の寄せ餌に集つて来る愛すべき彼女等を視る。程こそよけれと竿を振る。はりは思ふ壺に落ちて、続いて浮子うきが立つ。
健康を釣る (新字旧仮名) / 正木不如丘(著)
十二、三歳かと思われたが、顔がヒネてマセて見えるのでそう思うのだが、実は十一か高〻たかだか十二歳位かとも思われた。黙ってその児はシンになって浮子うきを見詰めて釣っている。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「いいか、浮子うきが三度沈まなけりゃ、糸をげるじゃないぞ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
浮子うきがくっと沈んだので、竿をあげると軽かった。餌を取られたのだと思い、糸をあげると、なにか掛っている。
私の釣りはおよそでたらめなもので、子供の使うような安い駄竿に、浮子うき下もよく計らず、もっぱら岸際のくいのあいだや、水草の蔭などを覘って糸をおろす。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私の釣りはおよそでたらめなもので、子供の使うような安い駄竿だざおに、浮子うき下もよく計らず、もっぱら岸際きしぎわくいのあいだや、水草のかげなどをねらって糸をおろす。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼はとつぜん顔をあげた、釣竿のさきの鈴がリリリと鳴りだしたから。浮子うきが水面を走り、竿がたわんだ、彼は手紙を投げて竿を取った。合せると、当りは強かった。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「餌のない鉤で釣ってるんだってと眼をきましたっけ、そのうえ浮子うきが動くたびに魚がくってるんじゃないかと思って、気持がおちつかないからどうにかしろって注文をつける始末でした」
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
浮子うきを見ろよ」
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)