浪漫的ロマンチック)” の例文
そうしてこの道をもう少し辛抱強く先へ押して行ったら、自分が今まで経験した事のない浪漫的ロマンチックな或物にぶつかるかも知れないと考え出す。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四人は、みかけた維納腸詰ウイン・ソーセージみ下すこともできず、しばらくは、奇異ふしぎな、浪漫的ロマンチックな、悪夢のなかを彷徨さまよっていた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
こんな浪漫的ロマンチックな美しい機会が、さう幾度だつてあるだらうか。生涯に再びとは得がたいたゞ一度の機会であるかも知れない。かうした機会を逸しては……
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
子規の写生にしてからが、空想味の深い浪漫的ロマンチックな詩歌に対しての写生説だったんだからね。一種の反抗運動として見るべきだろう。写生文にしてからがそうだ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
私は、そういう家のなかに、数年前からたった一人きりで、不幸な眼疾を養っているといわれる、美しい未亡人のことを、いくぶん浪漫的ロマンチックに、想像せずにはいられなかった。
(新字新仮名) / 堀辰雄(著)
大抵は(浪漫的ロマンチックな讀者よ、露骨な眞實を語ることを許せ)黒麥酒くろビールの瓶を持つて歸つて來るのだつた。彼女の外觀はいつでも彼女の奇怪な言葉によつて起される好奇心をにぶらせる役目やくめをした。
粗野ゴシックな、あるい浪漫的ロマンチックなものになってしまったかも知れない。
「盲目の兄! なんて、ずいぶん、浪漫的ロマンチックじゃないこと?」
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それは余りにも浪漫的ロマンチックな、虫のいい空想ではなかったか。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
与えられた彼の用事は待ち設けた空想よりもなお浪漫的ロマンチックであったからである。手紙の文句はもとより簡単で用事以外の言葉はいっさい書いてなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんな浪漫的ロマンチックな美しい機会が、そう幾度だってあるだろうか。生涯に再びとは得がたいたゞ一度の機会であるかも知れない。こうした機会を逸しては……
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「あれはなんという流派エコールの絵か知らないけど、なんとなく、あたしの趣味にぴったりするのよ。あの絵のは、ひどく浪漫的ロマンチックで、それに、いろいろ空想的なものがあるでしょう。そんなところにひきつけられているんだと思うわ」
思いのほかに浪漫的ロマンチックであった津田は、また思いのほかに着実であった。そうして彼はその両面の対照に気がついていなかった。だから自己の矛盾をにする必要はなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いかな浪漫的ロマンチックな敬太郎もこの男に頼んだら好い地位が得られるとは想像し得なかった。けれどもさも軽々と云って退ける彼の愛嬌あいきょうを、翻弄ほんろうと解釈するほどのひがみももたなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それほど浪漫的ロマンチックな人間じゃない。ぼくは君よりもはるかに散文的にできている」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
浪漫的ロマンチックなところ、が少なくはなかろうと思う。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)