河底かてい)” の例文
金が、何尺か河底かていの沼土を離れたと思うと、再び、体のほうが、金の力に持ってゆかれて、ぶくぶくと底へ引き込まれる。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな時こそ三十六計の奥の手を出して一散に駆け出し、危うく吾妻川の河底かていへ生埋めになる急場を辛くも通り過ぎ、四人相顧みて工夫こうふの猛悪なるに驚ろく。
大同ダムでき止められて、本来の懸崖の三分の一以上、二百じんも高く盛りあがったその水際みずぎわには、すなわち現実におけるうおは緑樹のこずえにのぼり巉岩ざんがん河底かていの暗処に没して幽明ゆうめいさらに分ちがたい。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
おもはず手がすべつて石は水煙みづけむり河底かていしづんでしまつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それは明るいしずかな画趣である。河底かていの砂にうもれた「はし」をあさるのだそうな。「木はし」は流木のずいであると聞いた。洪水に押流おしながされてきた樹木の磨き尽くし洗い尽くされたすえの髄である。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)