沐浴ゆあみ)” の例文
最近のフランス映画でも「沐浴ゆあみ」の如きは、陸軍将校の私生活を極度にだらしなく描いて、仏蘭西フランス軍隊はさんざんのやうに見えるが
日本映画の水準について (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
朝の内に月代さかやき沐浴ゆあみなんかして、家を出たのは正午ひるすぎだったけれども、何時いつ頃薬師堂へ参詣して、何処どこを歩いたのか、どうして寝たのか。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
即座に沐浴ゆあみくしけずり、化粧を凝らし、服装を整えて、丹之丞の前へれて来させました。
この薬泉に沐浴ゆあみして、薤葉かいようの葉を噛み、芸香うんこうの根を啜り、或いは、柏子はくしの茶、松花のさいなど喰べると、重き者も血色をよび返し、軽き者は、即座に爽快となって、歓語かんご、谷に満ちた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あのこよなく美しい薔薇いろの罌粟けし神授めぐみの朝露で沐浴ゆあみををへて鮮やかに燃えながら、きちんと行儀よく枝葉をそろへて、今し昇つたばかりの日輪に向つて美装を誇つてゐる時のやうに
そこには一糸をまとわぬ裸体の美人や、若い男たちが多数入り乱れて沐浴ゆあみをしていた。三枚目はどこを書いたものかはわからなかったが、独逸語で細かく地名を指示している一風変った地図であった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
つもっても知れる……世界を流れ渡る、この遍路芸人ジプシイも、楽屋風呂はどうしても可厭いやだと云って、折たたみの風呂を持参で、奈落で、沐浴ゆあみをするんだそうだっけ。
即座に沐浴ゆあみくしけづり、化粧を凝らし、服裝を整へて、丹之丞の前へ伴れてこさせました。
滅泉めっせんといい、これはその色あくまで青く、泉流は温かでまるで湯のようだ。またもしこれに浸って沐浴ゆあみすれば、皮肉はたちまち崩れて死んでしまい、後に底をのぞけば白骨があるだけのものだ
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただその上下うえした装束そうぞくにも、支度の夜は丑満うしみつ頃より、女紅場じょこうばに顔を揃えて一人々々沐浴ゆあみをするが、雪のはだえも、白脛しろはぎも、その湯は一人ずつべにを流し、白粉おしろい汲替くみかえる。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)