求道ぐどう)” の例文
また、京都の六角堂は、そこの精舎へ、叡山えいざんから百夜ももよのあいだ、求道ぐどうに燃え、死ぬか生きるかの悲壮なちかいを立てて通ったゆかである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが求道ぐどうの中途にあって肉親の温かい記憶を呼んだり、ある時は迂闊に道の辺の女人に水を求めて、はしなく恋情をかもさしめたりする。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しきみの香も室に満ちている所であったから、だれよりも求道ぐどう心の深い薫にとっては不浄な思いは現わすべくもなく
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
我に求道ぐどうの志あり、その労苦の果に、天意のごとく与えられた邂逅でなければならない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
この頃俳句において求道ぐどうということが言われておる。これは大変立派な言葉である。俳諧を振り返って見て、差し当り芭蕉などがまず求道という事を志した人であろうかと思う。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
思いたち、かく推参つかまつったが、うわさによれば当山は求道ぐどう熱心の者を喜んでお導きくださるとのお話じゃ。静かなへやがあらば暫時拝借いたしたいが、お許し願えましょうな
あの三氏の伝説は、あれは修身教科書などで、「忍耐」だの、「大勇と小勇」だのというテマでもってあつかわれているから、われら求道ぐどうの人士をこのように深く惑わす事になるのである。
親友交歓 (新字新仮名) / 太宰治(著)
唯哲人ヘーゲルなるものありて、講壇の上に、無上普遍の真を伝ふると聞いて、向上求道ぐどうの念に切なるがため、壇下だんかに、わが不穏ふおん底の疑義を解釈せんと欲したる清浄心の発現にほかならず。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
孤独はしよつぱくて、岩塩かなんぞのやうに手荒くある。実験室の甘汞カロメルよりも、もつと白いものであるかもしれぬ。——ゆふぐれの中で、求道ぐどう者の匂ひの漂ふ、和蘭陀石竹。かげつた邈漠たる、その色。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
これはどうしても決心を新にして少しでも繋縛の気のあるところは早速さっそくに避け退き、ひたすら求道ぐどうの一途に奔らねばならない。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それから行きはぐれてしまう所だった青春と求道ぐどうのわかれ道に——もしこのひとが心になかったら——あるいはついに
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ哲人ヘーゲルなるものありて、講壇の上に、無上普遍の真を伝うると聞いて、向上求道ぐどうの念に切なるがため、壇下に、わが不穏底ふおんていの疑義を解釈せんと欲したる清浄心しょうじょうしんの発現にほかならず。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで私がひそかに考えるには、彼と武蔵との関係は、当年の春山はむしろ求道ぐどうの壮年僧で、剣と禅との一道に契合けいごうしたことは事実でも、実際は武蔵のほうがずっと年長でもあったし
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安心と決定けつじょうができないために、一時は、ちかごろ支那から帰朝した栄西えいさい禅師のところへ走ったが、そこでも、求道ぐどうの光がつかめないので、あなたこなた、漂泊ひょうはくしたあげくに、去年の秋から
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)