気骨きぼね)” の例文
旧字:氣骨
「もっとも奥さんができてから、もうよっぽどになりますからね。しかし奥さんの方でもずいぶん気骨きぼねが折れるでしょう。あれじゃ」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
植松のお婆さんはそういう人だ。琴もひけば、歌の話もする。あの人をしゅうとめに持つんだから、お粂もなかなか気骨きぼねが折れようぜ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
カヤノの子供のないのんきさをミチがうらやましがると、カヤノはカヤノの夫の作太郎が酒を呑まないだけに気むずかしくて気骨きぼねの折れる話をし
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
よし それや、気骨きぼねは折れないさ、旦那さまがお留守だとね。だけど、奥さん一人になつて御覧。なんだかんだつて愚痴を聞かされて……。それだけならいゝさ。
動員挿話(二幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
その人にまたふまでは、とても重苦しくて気骨きぼねの折れる人、もう滅多めったには逢ふまいと思ひます。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
行商にもしかし幾分かれてきた。今ではもう人の家を訪ねるのにそう気骨きぼねは折れなくなったが、その代りやはり売れ行きはよくなかった。一日に三十銭も売れれば上等の方だった。
御承知ごしょうちとおり、わたくし仕事しごと大体だいたいうえ神界しんかいした人間界にんげんかいとの中間あいだちて御取次おとりつぎをいたすのでございますが、これでも相当そうとう気骨きぼねれまして、うっかりしてればどんな間違まちがいをするかれません。
そうした時期の執筆は殊に気骨きぼねの折れる仕事であった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)