残余のこり)” の例文
旧字:殘餘
早瀬はその水薬すいやく残余のこり火影ほかげに透かして、透明な液体の中に、芥子粒けしつぶほどの泡の、風のごとくめぐるさまに、莞爾にっこりして
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
残余のこりの儀式は壮麗なものだったが時々彼方此方で来会者がくすくす笑った。馬鹿な奴だ。教会は笑う処じゃない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三味線堀手枕舎里好たまくらやりこうの家で残余のこりの小判を呑んでいる女を突きとめることができたとは、人間万事塞翁さいおうが馬、何からいいつるをたぐり当てるか知れたものでない。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
わがきみをはじめ、一どうはしきりに舟子達かこたちはげまして、くる風浪ふうろうたたかいましたが、やがてりょうにんなみまれ、残余のこりちからつきて船底ふなぞこたおれ、ふねはいつくつがえるかわからなくなりました。
その氷針のような言葉が終わったかと思うと、さアッ! と一層、月輪の円形が開いて、あるいは谷を背に、他は丘にちらばり、残余のこりの者は刃列をそろえてすばやく山道の左右に退路を断った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)