檜物ひもの)” の例文
僕の親仁おやじは日本橋檜物ひもの町に開業してるから、手紙を書いてろうといって、親仁名当なあての一封を呉れたから私は喜んでこれ請取うけと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
投石の怪事にして、原因を発見せし例は前に掲げしほかに多々あるが、そのうちの一例は先年、群馬県高崎市檜物ひもの町に起こった出来事である。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
早くも逃げだす人たちだろう、老人や子供をせきたてたり、家財を荷車に積んだりして、つじ町から檜物ひもの町のほうへ、群衆が列をなして動いていた。
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
耕地も少なく、農業も難渋で、そうかと言って塗り物渡世の材料も手に入れがたいところでは、「御免ごめん檜物ひもの」ととなえて、毎年千数百ずつの檜木を申し受けている村もある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
はっきりした分業になっていて、まず木地きじ指物さしもの檜物ひものに分れます。即ち轆轤ろくろで椀をく者、板を組立てて膳や箱などを作る者、次にはひのきを材に曲物まげものを作る者の三つであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「そんな野暮な化物えてものぢやありませんよ、親分も御存じでせう、檜物ひもの町の小夜菊さよぎく師匠」
駒形の檜物ひもの屋、目黒の柏屋、堺町の祇園屋などがことに有名であった。
大工町、檜物ひもの町、金屋かなや町、鍛冶かじ町、鋳物師いもじ町、銅町、呉服ごふく町、紙屋町、箪笥町、紺屋こうや町等々工藝の町々が歴史を負って至る所に残る。それらは多く吾々を待っている場所と考えていい。
地方の民芸 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)