横啣よこぐわ)” の例文
誇りかな気軽い態度で、バットを横啣よこぐわえにしいしい、持場持場についている職工たちの白い呼吸を見まわした。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
辿たどるほどに、洋傘こうもりさしたありのよう——蝉の声が四辺あたりに途絶えて、何の鳥かカラカラとくのを聞くと、ちょっとそのくちばしにも、人間は胴中どうなか横啣よこぐわえにされそうであった。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『△△さんの靴は初めて見た、』と暢気な観察をする小僮こどももあった。黒い髯で通る○○は露助然たる駱駝帽を被って薄荷パイプを横啣よこぐわえの外套の衣兜かくしに両手を突込みの不得要領な顔をしていた。
又野はバットを横啣よこぐわえにしたまま白い眼で三好をかえりみた。膝を抱えたまま……。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一体何というやぶだ、破竹か、孟宗もうそうか、寒竹か、あたまから火をつけて蒸焼にしてかじると、ちと乱だ。楊枝ようじでもむことか、割箸を横啣よこぐわえとやりゃあがって、喰い裂いちゃ吐出しまさ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その癖、烏が横啣よこぐわえにして飛びそうな、いやな手つきだとしみじみ感じた。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……失礼だがきみの、身分を思って……生半可なまはんか横啣よこぐわえで、償いの多少に依りさえすればこんな事はきっと出来ると……二度目にあの塚へ、きみが姿を見せた時から、そう思った。悪心でそう思った。
と、横啣よこぐわえにペロリとめる。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)