椎茸髱しいたけたぼ)” の例文
其の次には黒装束に覆面の曲者くせものがおつぼねの中へ忍び込んで、ぐっすり寝て居る椎茸髱しいたけたぼの女の喉元へ布団の上から刀を突き通して居る。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お藤はもう、どこかで懐中のお鳥目をはらって、旅のしたくをととのえたとみえ、椎茸髱しいたけたぼもぎっとつッくずして、がらに合った世話な櫛巻。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たまにこぼれて出て来るのは、小姓梅之助に手をかるる腰元の青柳か、そっと外して酔ざましの椎茸髱しいたけたぼ。いずれも人目を忍ぶ色の、悪くすると御手討もの。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
洗い髪かんかで、椎茸髱しいたけたぼ小母おばさん方をめ廻しながら、長局ながつぼねで、八文字を踏む人柄ですが、それが退屈と慢心で毎日の生活を持て余している大膳正を
蟠「緑町みどりちょうの口入屋のばゝアを頼んで置いたが、髪は奥女中の椎茸髱しいたけたぼってな、模様の着物も金襴きんらんの帯も或る屋敷から借りて置いた、これ/\安兵衞、緑町の婆アが来たら是れへ通せ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
妙に人馴れた眼、少しほころびた唇、クネクネと肩でかじを取って、ニッと微笑したお菊は、椎茸髱しいたけたぼと、古文真宝こぶんしんぽうな顔を見馴れた土佐守の眼には、驚くべき魅力でした。
源太郎の娘で、気象者で通ったお銀の方も、椎茸髱しいたけたぼの女中どもにいじめ抜かれて、少し気が変になった。
椎茸髱しいたけたぼの腰元に餌をつけさせるような事はしませんが、番頭手代から、芸妓げいしゃ幇間たいこを引つれ、白粉臭おしろいくさい生きた屏風に取巻かれて一本百両の竿に、高尾、小紫の生毛いきげをつけ
「まさか椎茸髱しいたけたぼじゃねえが、間違いもなく武家の内儀だ。年は二十五六、——もう少し若いかな」
「まさか椎茸髱しいたけたぼぢやねえが、間違ひもなく武家の内儀だ。年は二十五六、——もう少し若いかな」
御守殿風の椎茸髱しいたけたぼになり、或は入山形いりやまがたに二つ星の花魁おいらんになり、町家の娘になり——妻木右太之進のその時その時の好みによって、あらゆる姿に変化して出現するのでした。
自分の弾みのついた身体からだ受止うけとめて、近々と寄せた女の顔、眉毛、唇——焔の色に燃えて、カッと赤くはなって居りましたが、それこそは、伊予守忠弘が日頃見慣れている、椎茸髱しいたけたぼに厚化粧で
「いえ、こればかりは親分も見当が違いましたよ、椎茸髱しいたけたぼで」