柿右衛門かきえもん)” の例文
渋染しぶぞめの頭巾をこうかぶりましてね、袖無そでなしを着て、何のことはない、柿右衛門かきえもんが線香を持ったような……だがふとっちょな醜男ぶおとこでさ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柿右衛門かきえもんという人などは、熟柿じゅくしが枝に下っているのを見て、その色を出そうとして、生涯をついやして出来ず、その子がこれをついで半ば完成し
九谷焼 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
伊万里と云えば「柿右衛門かきえもん」とか「色鍋島」とかを激賞するにきまっているのは見方の堕落による。それらのものにもある種のやさしき美は宿る。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
柿右衛門かきえもんが、かまのまえにしゃがんで、垣根のそとの道をとおるお百姓と朝の挨拶を交している。
それでも榎本君は晩年歌舞伎座の立作者たてさくしゃとなって、かの「名工柿右衛門かきえもん」や、「経島娘生贄きょうがしまむすめのいけにえ
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二階から下りた時、父はぎょくだの高麗焼こうらいやきだのの講釈をした。柿右衛門かきえもんと云う名前も聞かされた。一番下らないのはのんこうの茶碗であった。疲れた二人はついに表慶館を出た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
柿右衛門かきえもんを選んでもそうである。私たちは「無地もの」の世界を柿右衛門の中に聯想れんそうすることができるであろうか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
京の仁清にんせい色絵いろえ柿右衛門かきえもん、みな一派の特長がある。この山からだす色鍋島は、こう行くよりほかに道はないぞ、と彼はよく弟子の枯淡こたんになるのを叱りつける。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見られよ、あの苦心になる絢爛けんらん柿右衛門かきえもん赤絵あかえに対し、みん代の下手げてな五彩は圧倒的捷利しょうりを示すではないか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
だめだだめだ若い奴らは、五年もこの山にむとカサカサになって寒巌枯骨かんがんここつのていたらくだ、陶土つちあぶら艶気つやけもなくなってくる。そんな野郎は茶人相手の柿右衛門かきえもんの所へ行ッちまえ。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有名な柿右衛門かきえもんはこの上絵を試みた古い人でありました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)