朽目くちめ)” の例文
かや軒端のきばに鳥の声、というわびしいのであるが、お雪が、朝、晩、花売に市へ行く、出際と、帰ってからと、二度ずつ襷懸たすきがけで拭込ふきこむので、朽目くちめほこりたまらず
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
家は荒れておほしたてねど竹垣の朽目くちめより咲くなでしこの花
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
一四九朽目くちめに雨をふくみてこけむしぬ。
べとりと一面青苔あおごけに成つて、欠釣瓶かけつるべ一具いちぐ、さゝくれつた朽目くちめに、おおきく生えて、ねずみに黄を帯びた、手に余るばかりのきのこが一本。其のかさ既に落ちたり、とあつて、わきにものこそあれとふ。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
楽屋なる居室いまの小窓と、垣一重ひとえ隔てたる、広岡の庭の隅、塵塚ちりづかかたわらよこたわりて、たけ三尺余、周囲まわりおよそ二尺は有らむ、朽目くちめ赤く欠け欠けて、黒ずめる材木の、その本末もとすえには、小さき白きこけ
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)