うつろ)” の例文
今日やうやく一月のなかばを過ぎぬるに、梅林ばいりんの花は二千本のこずゑに咲乱れて、日にうつろへる光は玲瓏れいろうとして人のおもてを照し、みちうづむる幾斗いくと清香せいこうりてむすぶにへたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そのおもての色は惨として夕顔の花に宵月のうつろへる如く、そのひややかなるべきもほとほと、相似たりと見えぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
同じほどの火影の又うつろふと見れば、早くも薄れ行きて、こたびは燃えも揚らず、消えも遣らで、少時しばしあかりを保ちたりしが、風のわづかの絶間をぬすみて、閃々ひらひら納屋なやの板戸を伝ひ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)