新参者しんざんもの)” の例文
通人はしきりに新参者しんざんものを求めたりしに、あにはからんや新参者は数多あまたの列座中にあったので、それが分った時の通人の驚きは一方ひとかたならなかった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ただただ私は、まだ兄たち二人とのなじみも薄く、こころぼそく、とかく里心さとごころを起こしやすくしている新参者しんざんものの末子がそこに泣いているのを見た。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
先生は私がまだそれを知らないのに気がつき、つまらながる皆を説得して新参者しんざんもののためにその話をしてくれた。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
その上に硯友社からは新参者しんざんものとして外様とざま扱いされ、紅葉にも余り気に入らないで引立てられなかった。
の様にも拙者身体の続くだけは御奉公致します了簡なれども、上役のお引立が無ければとて新参者しんざんものなどは出世が出来ません、渡邊殿は別段御贔屓を下さいますが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
才蔵は新参者しんざんものの身にすぎた光栄と、いさんでその夜、こっそりと鳥刺とりさ稼業かぎょうの男に変装へんそうした。そしてもち竿ざお一本肩にかけ安土あづちの城をあかつきに抜けて、富岳ふがくの国へ道をいそぐ——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丘助手は、突然の博士のお出でに、思わずえりただして立上った——というより、飛上ったという方が当っているかも知れない。何しろ丘数夫は、この研究所では新参者しんざんものなのであるから。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
折よく白が来た。かみさんは、これですか、と少し案外の顔をした。然し新参者しんざんものの弱身で、感情をそこなわぬ為かく軍鶏の代壱円何十銭の冤罪費を払った。かれは斯様な出金を東京税とうきょうぜいと名づけた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
顔が売れていればそうでもないのだろうが、新参者しんざんものの悲しさで仕方がない。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それには、屈強くっきょう新参者しんざんものがひとりござります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)