放棄ほうき)” の例文
そう、そう、まえからだれにも、人間にんげん平等びょうどう権利けんりはあったのさ。それを無智むち卑屈ひくつのため、みずか放棄ほうきして、権力けんりょくや、金銭きんせんまえに、奴隷どれいとなってきたのだ。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もしもぼくが、そうした運命観にとらわれて、正しく生きるための努力を放棄ほうきするならば、ぼくは円周のどの一点にも行きつくことができないであろう。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
説き付け諒解りょうかいを得るように努めた商人になる目的を放棄ほうきさせる代りには行末ゆくすえのことを保証し必ず捨てて置かぬからとそこは言葉を尽したものと察せられる。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかも人間は相携あいたずさえてこの悲劇的な道を、欣求精進ごんぐしょうじんしなければならない。人間は次善に満足しながら、しかも常に最高善の追求を放棄ほうきすることを得ないのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
これすなわち彼の「精神の井戸いど水枯みずがれした」のである、遼遠りょうえんなるべき前途を放棄ほうきしたのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
こんなふて腐れた生活をしながらも私はなお、私の真実の望みや目的を放棄ほうきしてはいなかった。
「厭なら仕方が無い、権利を放棄ほうきするまでさ、其代り此腕環をもらう事は出来ないぞ」
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
「関門を放棄ほうきせよ」と、使いをやり
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)