推当おしあ)” の例文
最後に婦人は口中より一本の釘をはき出して、これを彼二十一歳の男子と記したる紙片に推当おしあて、鉄槌をもて丁々ちょうちょうと打ちたりけり。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
南北坂梨・手野ての・豆札・尾籠・狩尾・狩集方かりたまらい、是為東郷云々、右の狩集の訓はあるいは後人の附したものだろうが、少なくとも他郷人の推当おしあてではない。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
貫一の手にすがりて、たちまちその肩におもて推当おしあつると見れば、彼も泣音なくねもらすなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と曾根は可懐なつかしげに言って、お雪の手から子供を借りて抱いてみた。ひざの上に載せて、ほお推当おしあてるようにもしてみた。お房は見慣れないよそ叔母おばさんを恐れたか、声を揚げて泣叫ぶ。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
宮が顔を推当おしあてたる片袖かたそではしより、しきりまゆひそむが見えぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)