はた)” の例文
やがて半七が煙管きせるをぽんとはたくと、吸い殻の火玉は転げて松のうしろに落ちたので、その火玉を追って二度目の煙草をすい付けようとする時、草のあいだに何物をか見付けた。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
可愛い男が忍ばしてあるから、巾着の底をはたいて精々のご馳走をしているんだ
半七雑感 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
可愛い男を忍ばしてあるから、巾着きんちゃくの底をはたいてせいぜいの御馳走をしているんだ。おまけに毎月の書き入れにしている月浚いさえも休んでいるというのが、何よりの証拠だ。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今日こんにちではあまり用をなさないので、私もほとんど忘れていたが、今や先生の訃音ふいんを聞くと同時に、にわかにかの字書を思い出して、塵埃ほこりはたいて出して見た。父は十年ぜんに死んだ。先生も今や亡矣なし
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたしも自分の小遣い銭をはたいて出かけたのであるが、桟敷一間ひとま二円八十銭、高土間たかどま一間二円二十銭、ひら土間一間一円三十銭、そのほかに各一間に対して敷物代として五十銭を取るのであるから
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
老人が煙管きせるをぽんとはたくのを待ち兼ねるように、私は重ねていた。
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)