つらま)” の例文
それからいっしょに汽車に乗ったり、下りたりする時に、自分もこの男をつらまえて二三度長蔵さんと呼んだ事がある。しかし長蔵とはどう書くのか今もって知らない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
是公はそれでも舞踏会を見せる気と見えて、翌日あくるひひる、社の二階で上田君をつらまえて、君の燕尾服をこいつに貸してやらないか、君のならちょうど合いそうだと云っていた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
浅井をつらまえて、孤堂先生への談判を頼んでしまう。実はさっきもその考で、浅井の帰りを勘定に入れて、二三日の猶予をと云った。こんな事は人情に拘泥こうでいしない浅井に限る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今までは車屋のかみさんでもつらまえて、鼻づらを松の木へこすりつけてやろうくらいにまでおこっていた主人が、突然この反古紙ほごがみを読んで見たくなるのは不思議のようであるが
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが今度は小宮君が自身で枕元へすわって、自然も好いが人間の背景にある自然でなくっちゃとか何とか病人に向って古臭い説をきかけるので、余は小宮君をつらまえて御前は青二才あおにさいだとののしった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)