挙動ものごし)” の例文
旧字:擧動
源助さんは、もう四十位になつてゐるし、それに服装の立派なのが一際品格を上げて、挙動ものごしから話振から、昔よりは遙かに容体づいてゐた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この少年がさっき立ち上って来る時にも並いる印度人ことごとくが椅子いすから立って、慇懃いんぎん挙動ものごしで通路をあけてやったが
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
挙動ものごしから、いや殆んど何からといふことはなく、此の女の身の上話を——といふよりは、むしろ伝説を造り上げてしまつた、そして私は時々涙を流しながら
二人共、この春徴兵検査を受けたのだが、五尺不足たらずの山内はが目にも十七八にしか見えない。それでゐて何処か挙動ものごしが老人染みてもゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
徹夜よどほし三人で一斗五升飲んだといふ翌朝あくるあさでも、物言ひが舌蕩したたるく聞える許りで、挙動ものごしから歩き振りから、確然しつかりとしてゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
気障きざ厭味いやみもない、言語ことばから挙動ものごしから、穏和おとなしいづくめ、丁寧づくめ、謙遜づくめ。デスと言はずにゴアンスと言つて、其度ちよいと頭を下げるといつたふう。風采は余り揚つてゐなかつた。
今になつて考へて見ても随分好い感じのしないひとで、尻の大きい、肥つた、夏時などはそばへ寄ると臭気にほひのする程無精で、挙動ものごしから言葉から、半分眠つてる様な、小児心にも歯痒はがゆい位鈍々のろのろしてゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)