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不思議なことには、熱い涙が人知れず其顔を流れるといふ様子で、時々すゝり上げたり、そつと鼻をんだりした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
母はもとより泣いた、快活な父すら目出度い目出度いと言いながら、しきりに咳をしてはなんでいた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
鼻汁はなをたらしていると、東京へ行って笑われるで、綺麗きれいに行儀をよくしているだぞ。」と、父親はお庄の涕汁はななぞをんでやった。気の荒い父親も旅へ出てからの妻や子に対する心持は優しかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しまいには絹手帕ハンケチも鼻をんで捨て、香水は惜気もなく御紅閨おねまに振掛け、気に入らぬ髪は結立ゆいたて掻乱かきこわして二度も三度も結わせ、夜食好みをなさるようになって、糠味噌ぬかみその新漬に花鰹はながつおをかけさせ
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)